伝統の看板を飲み込む弘道会の知略―大物幹部の「移籍・代替り劇」の裏にある狙いとは?
今回、「移籍・代替り劇」の舞台となっている組織の事務所
暴力団排除条例(2011年)の施行以降、組員から「いつ、何の容疑で逮捕されるかわからない」との声が上がるほど、ヤクザに対する取り締まりは厳しくなった。ヤクザの組員が少しでもグレーな行為をすれば、あらゆる法の解釈によって逮捕されてもおかしくない状態が続いている。
それでも根絶されることなく、確かにヤクザは存在している。これだけ当局からの弾圧が強まる中で、組員たちは、どうやって生活しているのだろうか。そんな中で台頭しているのが、特殊詐欺に関わる組員たちだ。当然、そんな組員たちの検挙数も増えている。
「そもそもどこの組織でも特殊詐欺は禁じられています。それは、単なる綺麗事ばかりではありません。末端の組員が特殊詐欺で逮捕されたことで、面識すらない一次団体のトップにまで、被害者側が使用者責任に基づいて損害賠償を求めることができるからです。こうなれば、組長や幹部らはたまったものではないでしょう。数千人を抱える組織の上層部であれば、下部組織の組員の顔どころか名前すら知らないことなんてよくある話です。その責任まで押し付けられるのですから、下部組員に至るまで、どこの組織でも特殊詐欺を禁じているのです」(ヤクザ事情に詳しいジャーナリスト)
これは今に始まったことではない。いわゆる「オレオレ詐欺」と呼ばれて誕生した時代から、特殊詐欺に関われば即刻処分すると通達を出していた組織がある。その代表的な組織と言えるのが、国内最大のヤクザ組織である山口組だろう。六代目山口組では、特殊詐欺と同様に覚醒剤事案への関与も禁じてきた。それでも、そうした事案による組員らの逮捕を根絶できていないというのが現状だ。
「とにかくシノギができない。だからといって特殊詐欺に手を出すという発想は、いささか早合点すぎるのではないか。そもそも特殊詐欺をやる人間と、ヤクザの本来のシノギは根本的に違う。たとえば代表的なシノギでいえば、“守り代”と呼ばれるみかじめ料だ。暴排条例によって、みかじめをもらう側だけでなく、払った側も処罰の対象となった。これで新規のみかじめはほぼ壊滅的となり、いくらグレーなシノギであっても、払った側にリスクが問われることとなった。
バクチも同様だ。昔のように賭場を開張することはまずなくなったが、インターネットカジノにしても、人脈や相応の資金がなければできない。それだけではなく、賃貸契約や銀行口座の開設にまで制限がかかり、逮捕されることもある。その影響で、若い世代がヤクザ社会に流れにくくなり、結果としてヤクザ人口は年々減少している。
こうしたヤクザに対する厳罰化が進む中、多くの組員は新たなシノギを開拓できず、困窮しているのが現状だ。一方で、特殊詐欺に関与しているとされる組員やその周辺者は羽振りがすこぶる良く、インターネット絡みのゆすりのような新たなシノギの開拓にも成功している。良い悪いの問題ではなく、特殊詐欺に関与している組員と関与していない組員とでは、同じヤクザでもタイプが異なると見た方がよいのではないか」(元関係者)
以前であれば、経済ヤクザと武闘派ヤクザという表現が使われていたが、この元関係者の話を聞く限り、それに近い側面があるのかもしれない。
このようにヤクザに対する取り締まりが強化されるなか、この春、ヤクザ業界に大きな動きがあるのではないかと囁かれている。それが、伝統ある組織の代替わりに向けて行われたとされる養子縁組。そして、この4月についに代替わりが断行されるのではないかというのだ。これらの動きの裏にある目論見とは――。